暮らしの中に生きる椿

つばき園1

日本の生活文化を象徴する椿

 現在「椿」は、「花を楽しむ園芸植物」と考えますが、古来「生活に役立つ有用植物」としても重用されてきました。また、文学、絵画、祭事、仏事、年中行事、食生活にいたるまで、日本人の生活や文化に深く関わってきました。
 こうしたことから、桜を日本の精神文化の象徴とすれば、椿は生活文化の象徴だといえるのではないでしょうか。

 暮らしに生きる椿の効用をご紹介します。

椿油

やぶ椿の種子を乾燥し砕いたものを蒸して搾油したものです。酸や匂いを除いて精製したものは86%から92%のオレイン酸を含むなど、オリーブオイルに勝る不乾性油の代表です

●髪、肌の手入れ用・・・髪につやを与え潤いを保つ、UV-B(有害紫外線)をカットし、ブラッシングによる摩擦を防ぎキューティクルを保護します。
               人の皮脂成分に近いため刺激が無く、皮膚の組織に吸収されやすくて、保湿性にも富んでいます。

●食 用・・・オレイン酸が豊富なので、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがあります。
       美味な上に、高血圧、心臓疾患、消化器疾患などにも効果があり、椿油で揚げたものは食感がよく胃もたれしません。

●その他・・・灯用・家具・木製品・漆器・敷居の手入れ、刃物の錆止めとして利用されてきました。
        椿油の搾り粕には、ナメクジの駆除効果があり、土中に鍬き込むと、線虫の駆除や肥料として使えます。
        その他、古くは不老長寿の薬として使われたことも記録されています。

下痢止めや打撲傷に効くほか、タコを柔らかく煮たり、椿餅にも利用されます。

椿の木は堅く緻密で均質、重くて粘りがあり光沢がでます。椿は神が宿る木とも考えられており、邪気や災いを払う霊力があるとされます。
生活用品では、食器、木魚、ろうそく立て、煙草盆、独楽、木槌などに加工されます。

椿灰は椿の葉を焼いて作ります。紫根染めの媒染剤として用いられます。また焼き物の釉薬(うわぐすり)としても利用されます。

火付がよく、火の子が飛ばず、火持ちが良く、熱も穏やかで最高級品とされています。蒔絵の研ぎにも使われていました。

 

椿はおめでたい木

椿の花は「ぽとり」と落ちることから、「首が落ちる」のを連想させるとして嫌う風習もありますが、本来「冬枯れしない艶やかな常緑樹」で、実生でも挿し木でも殖やすことができ、生活にも大いに役に立つと言われています。
そのことから、椿にまつわる伝説や信仰は全般的に「厄除け」「長寿」「吉祥」「子孫繁栄」といった、喜ばしいものであるといえます。

ぽとり」の言い伝えは、椿ブームがおこった江戸時代に、珍しい品種を求めて破格な取引や窃盗まで出たため、それらを戒めるために流されたとも言われています。枯れた花を木に残さず、散り方が潔いきれいな花ととらえる見方もあります。

古くは、古希や喜寿、傘寿、米寿などの賀寿を「椿寿(ちんじゅ)」と呼んでいたことからも、椿は「樹齢の長いめでたい木」であるといえるでしょう。

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